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時計台の敷地内に入ると陸がぽつりと言った。
「若い頃にさ...いつか愛する人が出来てプロポーズをする時は、この時計台の前でって決めていたんだ...」
陸は昔を懐かしむような表情をして、穏やかに言った。
それを聞いた華子は、
「何それ~! りく、かわいい~!」
華子はキャッキャと笑いながら叫んだ。
その時、先に時計台を見学していたカップルが
表通りへ出て行った。
時計台には、陸と華子だけになった。
そこで陸は華子と向かい合い、
先ほど購入した指輪のリングケースを紙袋から取り出す。
そして、リングケースの蓋を開けてから、
真面目な顔をして言った。
「君を一生大切にすると誓うよ。君を世界一幸せな奥さんにするとも約束する。だから華子、俺と結婚しよう!」
陸は華子へプロポーズをした。
二人の婚約は、元々は華子が陸にプロポーズをした事が始まりだった。
なんとなくその流れで婚約をした二人だったが、
陸からのプロポーズは、今までなかった。
しかし、今確かに、陸はプロポーズをしてくれた。
華子は予想外の展開に、感無量になる。
言葉が上手く出てこない。
何か言わなくちゃと焦れば焦るほど、喉が詰まって上手く声が出せない。
それでも華子は必死に言葉を発した。
「陸...ありがとう......末永く、よろしくお願いします」
華子はやっとそう答えると、おずおずと左手を陸に差し出した。
陸は華子の手を取ると、その薬指にエメラルドカットのダイヤモンドリングをはめていった。
華子の薬指には、以前陸が贈った指輪と、
今日贈ったエンゲージリングが仲良く並んでいた。
高貴な輝きを放つダイヤモンドのその指輪は、
華子の美しい指にとてもよく似合っていた。
二つの美しい指輪は、互いの光により相乗効果を生み出し、
さらに煌びやかな輝きを解き放っていた。
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