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26
そして翌月、
華子はハワイにいる陸の母へ会いに行く事になった。
二人は今、ホノルル行きの飛行機に搭乗中だ。
機内では、キャビンアテンダントが食事のサービスを開始した。
それを見つめながら、華子は数ヶ月前に飛行機内で偶然再会した
元義理の妹の栞の事を思い出していた。
栞は、母が再婚した相手の連れ子だった。
栞は現在キャビンアテンダントとして活躍している。
栞は華子とは違い、物静かで謙虚で、とても聡明な子だった。
コツコツ努力をするタイプの栞は、
キャビンアテンダントという夢を掴んだ。
栞は夢を叶え、生き生きとしていた。
そこで華子が陸に言った。
「陸...私ね...通信教育で保育士の資格を取ろうと思うの」
食事を食べ始めていた陸が、ナイフとフォークの動きを止める。
そして言った。
「素敵な決断だな! やりたい事があるのなら、どんどんチャレンジすればいい...俺は応援するよ!」
「うん...ありがと、頑張ってみる! でね、私には以前義理の妹がいたって話したわよね?」
「ああ....お母さんが再婚していた時だろう?」
「そう...その妹がね、キャビンアテンダントになっていたの。以前、神戸に行く飛行機の中で、偶然再会したのよ」
「へぇ...そんな事があったのか...で? 何か話したのか?」
「ううん...あの時の私は、本当に最低な女だったわ! 彼女にクレームまがいの事を言ったりしてね...本当に嫌な女だったの...」
それを聞いた陸は、しばらく黙ったままだったが、
華子に向かって言った。
「済んでしまった事はどうしようもないさ。取り消そうったって取り消せないんだからな...。ただ華子はちゃんと反省をしている。だからそれでいいんだよ。もし、またどこかで妹さんに会う機会があったら、その時は思いやりを持って優しく接する事が出来るといいな...」
「思いやりを持って優しく......?」
「そう.....相手を責める事は、結局自分を責めているのと同じなんだよ。逆に、相手に対し、思いやりを持って優しく接する事が出来れば、それは結局自分自身を大切にしているって事なんだ...だから、もしまた会うことがあれば、優しく出来るといいな...」
「うん、絶対にそうするわ! でも、もう会う事はをないかも...もう会えないかもしれないから、余計に後悔しちゃうのよね...」
「だろ? 本意じゃない行動を取ると、結局は自分を苦しめる事になるんだよ。華子はもっと自分の事を大切にした方がいい...君はもっと自分自身を愛してあげるべきなんだ...」
陸はそう言って微笑んだ。
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