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カウンターの内側を通りながら、陸は卓也に言った。 「彼女、明日からカフェで働いてもらうから」 「えっ? そうなんですか?」 卓也はびっくりした様子で言ってから、 華子の方をチラリと見た。 その時華子と目が合ったので、ペコリと頭を下げる。 「タウン誌への求人は出さなくていいよ」 「わかりました」 「じゃあ今日は先に帰るわ」 「お疲れ様です」 卓也はそう言って陸に軽く頭を下げた。 陸は頷くと、店の出口へ向かう。 その途中、バーの常連客らしき男性が陸に声をかけた。 「陸ちゃん! 今日は例のDVD上映ないの?」 「ああ、あれは作田(さくた)さんが今家に持って帰っちゃったから、戻って来たらやりますよ」 「そうかい? 俺、楽しみにしていたんだけどなぁ」 「来週には上映できると思いますから、もうちょっとお待ち下さい」 陸は申し訳なさそうに笑顔でぺこりとお辞儀をした。 「いいよいいよ、俺はどうせ毎週来るからさぁ」 男性はそう言ってガハガハと笑いながら陸に手を挙げた。
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