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駅の柱時計の、オーバーホールは、思ったより時間のかかる作業だった。
もう、手に入らない部品も多く、それらは自分で作らないといけない。
圭佑は、凝り固まった首と腕をまわして、一息ついた。
明日の朝には、また真言がやってくる、圭佑は、真言の時計をそっと触った。
「圭佑さん、町役場のホームページみましたか、冬特集の第一回、吉川さんがアップしてくれたんですよ」
真言が、楽しそうに見せてきたスマホの画面には、なぜか圭佑の写真が……
「え?なんで?」
圭佑は、驚いて、ソレを手に取った。
「いいでしょ、このさわやかな笑顔、俺の渾身の一枚ですよ」
真言は、自慢げに、胸を張った。
「そうじゃなくて、冬ならではの町のよさを、つたえるコーナーだろ、なんで俺が…… 」
「カッコイイからです。
吉川さんが『イケメンが町に人を呼ぶんです』と熱弁してました。
俺としては、これ以上圭佑さんの、カッコ良さをみんなに教えたくはないんですけど、吉川さんに雇われている身なので…… 泣く泣く、了承しました」
真言は、目を手で覆って、首を振った。
圭佑は、その理由に、言葉を失った。
「あっ、ちゃんと時計店の詳しい紹介ものっていますよ」
真言は、写真の下へ、画面をスクロールした。
圭佑は、無言で真言を睨むと、その頬っぺたを左右に引っ張った
思ったより柔らかいそれは、良く伸びた。
「……痛い、痛いよ圭佑さん」
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