大きな柱時計

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 圭佑には秘密がある。  その秘密とは、圭佑の持っている不思議な能力の事で、その能力に気が付いたのは、小学四年生の頃だった。  圭佑の父は忙しく、夜遅くならないと、家には帰ってこない。 学校から帰ると、何時も、祖父が居る、西沢時計店に遊びに行き、そこで宿題をして、夕飯を食べた、泊っていくこともよくあった。  時計店に依頼される、壊れた時計に触っているうちに、圭佑は不思議なことに気が付いた。 それは、時計を触るだけで、時計の持ち主の顔や、周りの人、彼らの関係性までもが分かり、その人々の行動が、逆回しの動画のように頭の中に浮かぶ。  音はないが表情は鮮明に見える、最近あった出来事から、逆再生のように見えるので、 時計が壊れた原因はすぐに分かった。    祖父に時計が壊れた原因をあれらこれやと教えるうちに、祖父になぜわかるのかと聞かれた。  時計を触ると頭に浮かぶと素直に話すと、そのことは誰にも話してはいけないと言われた。  魔法のような、その能力があることを知っているのは、亡くなった祖父、三和子、三和子の夫の(あきら)だけだ。    祖父が、病気で自分の余命を知ると、圭佑を心配して、三和子と明に、秘密を話したのだ。  三和子と明は、圭佑の祖父と幼馴染で、祖父は二人に絶対の信用をおいていた。  祖父には自信があった、どんな不思議なことがおこっても二人なら、 その話を信じてくれる、必ず圭佑を守ってくれる。  祖父が二人の話をするときは、いつも優しい顔で、少し自慢げだった。 事実二人は、祖父の願いを聞いてくれた、いまも圭佑のことを気にかけてくれている。    その日、圭佑は時計店を閉めると、駅の時計に向き合った。 時計を開く前にじっくりと見る、振り子が止まり、文字盤もセピア色に日焼けしている 触ると、時計を見上げる小さな女の子、振り子の揺れを楽しみ、 時計の音に目を丸くしている、時計の幸せな時間。 「早く治してあげるね」 時計にそう話しかけた。    次の日、博物館に連絡をいれる、『何とか治せそうだ』と伝えると、 費用も、時間も、いくらかかっても構わないので、是非直してほしいと頼まれた。
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