恋人始めます

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恋人始めます

 真言はうつむいたままの、圭佑の頭を抱きしめた 「頑張りました」 せめて、精一杯の心を込めて、少しでも圭佑が癒されるように。  圭佑も、されるがままに任せていた。 「俺は、何もしてないよ…」 圭佑は、ポツリと話し出した、何か吐き出さないと、いっぱいになった気持ちに、押しつぶされそうだった。 「しおりさん、うまくいくといいね」 「そうですね」 真言は、圭佑の頭を、ギュッと抱きしめ直した。 「…しおりさん、可愛かったね」 「素直な人でした」 しおりより、圭佑の方が百倍可愛らしいと思いながら、そう返す。 「…… 妹なのかな」 「妹、ほしいですか?」 しおりの事ばかり話す圭佑に、少し、嫉妬した。 「ほしい? いや、どうかな…」 「…… 妹より 、恋人はいりませんか? まず、俺を恋人にするのはどうですか? 」  圭佑はようやく顔を上げて真言を見た 「俺でいいの?」  真言は、圭佑を見降ろしながら、苦笑する…… 圭佑の目をじっと見つめる 「圭佑さんがいいんです、俺の恋人になってください」  その声が、静かな空間に、圭佑の心に波紋が広がるように響いた、いっぱいになっていた心の中を優しくなでた。 「うん、…… いいよ」 真言の顔を見ているだけで、鼻の奥がつんとして、涙があふれそうになった 「いいの?本当に?」 真言に、しっぽがあったら、ぶんぶん振っているだろう、嬉しくてしょうがないといった顔で、聞き返された。  圭佑は、小さく頷いた。 二人は自然に、磁石がひかれ合うように、キスをした。 ぎこちない、初々しいキスに、笑いがこぼれる、おでこをくっつけて笑いあう。 「好きです、圭佑さん」 「うん、俺も」  真言は、一度ぎゅっと圭佑を抱きしめると、パッと手を離した。 キョトンとした圭佑が、真言を見た。 「帰ります」 真言は、そっぽを向いて早口で言った 「今日は、もう舞い上がって、何しでかすかわからないので、帰ります。 今、弱ってる圭佑さんに、つけこみそうだから、帰ります」 真言は、扉まで大股で歩くと、ドアノブに手をかけて、圭佑に振り返った。 「でも、恋人になってくれるって、言った言葉は、とり消せませんからね」 念を押すと、真言は勢いよく、扉を開けて店を出て行った。  圭佑はあっけにとられて、閉じた扉を見つめた。 「…つけこんでも、いいんだけどなぁ」 小さな声で言ったはずの、その独り言が、店に響いた。    
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