人気モデル木乃の本気

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人気モデル木乃の本気

 撮影スタジオの片隅で、真言はカメラのセッティングをしていた。 今日は、ファッション誌のスチールを、撮っていた。  真言は、久しぶりに、何人かの顔見知りのモデルと一緒になった。 その中には、人気モデルの木乃(きの)やリリカもいた。 「マコトセンセ、いい事あったの?」 リリカが、明るく声を掛けた。 モデルたちは、よく真言のことをふざけて『マコトセンセ』と呼ぶ 「え? どうして? 」 「マコトセンセ、今日はふわふわピンクのオーラだもん」 「ふわふわピンク? 」  木乃が、真言とリリカの会話に入ってきた 「何の話?新しい仕事うまくいってるの?」 「うん、地元の町の冬特集なんだ、地元って元気になるよね」 真言は、セッティングの手を再開しながら、話した。 「そうなんだ、マコトセンセ、地元に恋人いるの? 初恋の人にでもあったの?」 リリカがのんきにそう聞いた。 「うん、そうなんだ」 真言は嬉しそうに、照れくさそうに笑った。 「恋人になってくれたんだ、あの人」 木乃は、探るように、そう聞いた。 「えー!すごい! だからマコトセンセ、ピンクなんだね」 リリカはニコニコ笑って、手をたたいた。 「木乃ちゃーん、衣装チェンジお願いします」 スタッフに呼ばれて、木乃は真言を気にしながら、フィッティングルームに向った。 「マコトセンセの恋人さんって、年上?」 リリカの質問は、まだまだ続く。 「うん、そうだ、なんでわかったの?」 「その赤い腕時計、恋人さんからのプレゼントでしょ、とっても高そう」 「あー、これは借りてるだけだよ、僕の恋人は時計職人なんだ」 「そーなんだー、かっこいいね。 マコトセンセ、木乃にモーションかけられても、なびかなかったの、もしかして、その恋人さんこと、好きだったから?」 「うん、まぁ…… 」 「わぉ、マコトセンセって、一途なんだね♡」 リリカは飛び跳ねて、キャッ、キャッと笑った。 「知ってる? 時計送るときは、意味があるんだよ。 『貴方の時間は私の物』 すっごい束縛だよね♡」 「そうなんだ、今度聞いてみる」 真言は、真剣にそう言った。 「聞くの?」 「うん、え?ダメ?」 リリカは鈴を転がしたようにコロコロ笑った。    リリカも、衣装チェンジに呼ばれて、行ってしまった後、真言は赤い時計を眺めた。  左手で口を押える、いつもの癖。 そして、にやける顔をもう、おさえきれなかった。
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