54人が本棚に入れています
本棚に追加
雪合戦は本気で取り組め
真言は、スキー場の写真を撮りに来ていた。
大きなスキー場で、リフトが九本もあった。
ゲレンデの様子、リフト、レンタルショップ
レストラン、休憩所などの写真を次々にとっていく。
一通り写真を撮り終えると。
吉川さんが言っていた、圭佑がインストラクターをしているという話を思い出し、ついついゲレンデを探してしまう。
「おい、お前!変質者か」
見ると、小学二、三年生だろうか
男の子が三人腕組みをして立っていた
「え? 変質者? なんで? 」
「スキー場なのに、スキーもしないで、写真ばっかり撮ってただろ」
「! ちがう! ちがう!
仕事でこのスキー場を紹介する写真を撮ってるんだよ」
「…… 仕事、終わったか? 」
何の質問を受けているのか、理解できず、しばし固まる
「終わったっていうか…… 」
「終わってないのか? 」
「いや一応、終わったけど」
「じゃあ、雪合戦しようぜ」
聞けば、三人は今日スキー教室で友達になり
『雪合戦でもしよう! 』となったが、
三人で、二組に分かれるのは、どうにも都合が悪いので、もう一人、仲間を探しているところ、だったらしい。
三人の、期待のこもった目で見つめられたら…… しょうがない。
「じゃあ、ちょっとなら、いいよ」
その返事を聞いた子供達は、可愛らしく飛び跳ねて喜んだ。
「兄ちゃん名前は?おれダイゴ」
「俺は、真言だよ」
「おれはショウ、こっちはケンゾーだよ」
「じゃんけんで組み決めな」
じゃんけんの結果
ダイゴ・真言チーム 対 ショウ・ケンゾーチーム
に分かれた。
四人はルールを決めると、雪玉を作り始める。
ルールは簡単、降参した方が負けだ。
「いくぞー」
「おー」
本気で取り組む雪合戦は、
雪玉が激しく飛び交い、大騒ぎでなかなか面白い。
盛り上がりすぎて、流れ弾がスキーヤーにあたってしまった。
「先生、ごめん!」
ケンゾーがさけんだので、雪合戦は一瞬とまった
ゴーグルを外したスキーヤーは圭佑圭佑だった。
真言はその姿に、息をするのも忘れるほどみとれてしまったが、ハッと我にかえって
「イケメン怪獣だやっつけろ」
と叫んだ。
真言の言葉に、子供たちもいっせいに雪玉をなげる
圭佑は集中攻撃に会い、頭を抱えて逃げ回った
「ちょっと! ちょっと待って! 」
「先生も一緒にやろう、こっちチームね
おれたち負けそうなの!」
ショウがそういったので、
圭佑は、ショウ・ケンゾーチームにはいった
圭佑が仲間に加わって数分で、形勢は逆転した
「ダメだ、圧倒的不利、負ける気しかしねえ」
飛んでくる雪玉が多すぎて、よけるので精一杯だ
「二対三はつらいぜ」
「よし、ここは男らしく行こう」
真言とダイゴは頷きあった、
二人はそろって両手を挙げて降伏した
それでも子供たちは満足したようで
真言と次の約束のゆびきりをして帰っていった
「雪合戦、もえましたね」
「うん、楽しかった。教室が終わってから、子供たちと遊んだの初めてだよ」
圭佑と真言は、顔を見合わせてこらえきれなくなって、腹を抱えて笑った。
「真言君、結構本気だったよね」
「圭佑さんこそ、子供みたいにはしゃいでましたよ」
童心に帰って、精一杯遊んだ思い出は、腹の底から、ホカホカと心まで温めるた。
最初のコメントを投稿しよう!