雪合戦は本気で取り組め

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雪合戦は本気で取り組め

真言は、スキー場の写真を撮りに来ていた。 大きなスキー場で、リフトが九本もあった。  ゲレンデの様子、リフト、レンタルショップ レストラン、休憩所などの写真を次々にとっていく。  一通り写真を撮り終えると。 吉川さんが言っていた、圭佑がインストラクターをしているという話を思い出し、ついついゲレンデを探してしまう。 「おい、お前!変質者か」 見ると、小学二、三年生だろうか 男の子が三人腕組みをして立っていた 「え? 変質者? なんで? 」 「スキー場なのに、スキーもしないで、写真ばっかり撮ってただろ」 「! ちがう! ちがう! 仕事でこのスキー場を紹介する写真を撮ってるんだよ」 「…… 仕事、終わったか? 」 何の質問を受けているのか、理解できず、しばし固まる 「終わったっていうか…… 」 「終わってないのか? 」 「いや一応、終わったけど」 「じゃあ、雪合戦しようぜ」  聞けば、三人は今日スキー教室で友達になり 『雪合戦でもしよう! 』となったが、 三人で、二組に分かれるのは、どうにも都合が悪いので、もう一人、仲間を探しているところ、だったらしい。 三人の、期待のこもった目で見つめられたら…… しょうがない。 「じゃあ、ちょっとなら、いいよ」 その返事を聞いた子供達は、可愛らしく飛び跳ねて喜んだ。 「兄ちゃん名前は?おれダイゴ」 「俺は、真言(まこと)だよ」 「おれはショウ、こっちはケンゾーだよ」 「じゃんけんで組み決めな」 じゃんけんの結果 ダイゴ・真言チーム 対 ショウ・ケンゾーチーム に分かれた。 四人はルールを決めると、雪玉を作り始める。 ルールは簡単、降参した方が負けだ。 「いくぞー」 「おー」  本気で取り組む雪合戦は、 雪玉が激しく飛び交い、大騒ぎでなかなか面白い。 盛り上がりすぎて、流れ弾がスキーヤーにあたってしまった。 「先生、ごめん!」 ケンゾーがさけんだので、雪合戦は一瞬とまった ゴーグルを外したスキーヤーは圭佑(けいすけ)圭佑だった。    真言はその姿に、息をするのも忘れるほどみとれてしまったが、ハッと我にかえって 「イケメン怪獣だやっつけろ」 と叫んだ。  真言の言葉に、子供たちもいっせいに雪玉をなげる 圭佑は集中攻撃に会い、頭を抱えて逃げ回った 「ちょっと! ちょっと待って! 」 「先生も一緒にやろう、こっちチームね おれたち負けそうなの!」 ショウがそういったので、 圭佑は、ショウ・ケンゾーチームにはいった 圭佑が仲間に加わって数分で、形勢は逆転した 「ダメだ、圧倒的不利、負ける気しかしねえ」 飛んでくる雪玉が多すぎて、よけるので精一杯だ 「二対三はつらいぜ」 「よし、ここは男らしく行こう」 真言とダイゴは頷きあった、 二人はそろって両手を挙げて降伏した  それでも子供たちは満足したようで 真言と次の約束のゆびきりをして帰っていった 「雪合戦、もえましたね」 「うん、楽しかった。教室が終わってから、子供たちと遊んだの初めてだよ」 圭佑と真言は、顔を見合わせてこらえきれなくなって、腹を抱えて笑った。 「真言君、結構本気だったよね」 「圭佑さんこそ、子供みたいにはしゃいでましたよ」 童心に帰って、精一杯遊んだ思い出は、腹の底から、ホカホカと心まで温めるた。
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