タグホイヤー

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 真言は、川沿いの遊歩道の写真を、撮っていた。 何気ない場所だが、石碑が置かれていたり、様々な形のベンチがあったり、小鳥の餌台があったり……。  なかなか面白い、穴場として紹介できないだろうかと思ったからだ。  長く遠くまで続く道を、撮るために、木に登ってみた。 上からとればその分、遠くまで続いていることがわかる。  何枚かとって、ふと大きな屋敷の前に、圭佑の車が止まっているのを、見つけた。  気になってそちらを見ていると、慌てた様子で圭佑が出てきた。 それを追って、家の主人だろうか、色気ムンムンな熟女がやってきて、圭佑の首に手をまわした。  誘惑されてる? 「えーーー」 真言は自分で叫んで、そのはずみにバランスを崩した。  もう、落ちるのはまぬがれない。 せめてカメラは守らなくては。 両手で、カメラを抱えているので、手は自由につかえない、何の受け身もとれず、派手な水しぶきをあげて、川に落っこちた。  落ちていきながら、圭佑がこちらを振り向いたのが見えた。
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