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時は流れ、卒業式の翌日。
私たちは私服で会っていた。
もう制服のポケットにメモを入れることはない。
高校を卒業した私たちは、制服とはお別れ。
ミナトとの不思議なつながりも、もうおしまいだ。
それでも不安はない。
右手を差し出すと、ミナトは左手をそっと重ねた。
重なった手にカサリと当たる紙の感触に驚いて手を離すと、それはいつもの白い紙だった。
見上げると、ミナトは優しく微笑んだ。
微笑みにうながされて折りたたまれた白い紙を開いた。
『卒業おめでとう。好きだ』
思わずミナトに抱きついた。
耳元で、同じ言葉をミナトに贈る。
ミナトは軽く声を立てて笑って、私の頬にキスをした。
不思議なポケットを介した文通は、昨日で終わり。
それでもまったく不安はない。
私たちはもう、手渡しの手紙でも、声でも、想いを伝えることができるから。
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