ポケットは想いを届ける

2/13
前へ
/13ページ
次へ
 ポケットの中に、メモを入れた。  今回は小説を読んでいて何となくいいなと思ったフレーズを書き留めただけだった。  またいつもの桜柄のメモ帳に。  昨日ポケットに入れたメモをなくしたばかりだというのに、私は懲りずにポケットにメモを入れた。  今読んでいる小説は言い回しが美しくて、また書き留めておきたいフレーズと出会った。  さっきのメモに追加で書き込もうとしてポケットに手を入れたら、何も入っていなかった。  私はポケットをまじまじと見た。  穴でも空いているのだろうか。  高校一年生の冬。まだ一年も着ていない私の制服のポケットは、当然のようにピシリと制服にくっついていた。  家に帰って、何気なくポケットに手を入れた。  カサリと指に触れる感触に驚いて取り出してみると、なくしたはずのメモが手のひらの上にのっていた。  さっき探したポケットは左右が逆だったのかもしれない。  きっとそうだ。  苦笑いを浮かべて、小説の栞を挟んでおいたページのフレーズをメモに書き写した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加