ポケットは想いを届ける

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 ポケットの中に、メモを入れた。  放課後、高校からの帰り道で赤いインクのボールペンとシャープペンシルの芯を買おうと思ったのだ。  勉強に追われる高校生にとっては必須のアイテム。  買い物のメモはポケットに入れた方が取り出しやすくて便利だし。  またなくすことがないように、右側のポケットの底に丁寧にメモを入れた。  放課後。部活に行く前にポケットの中のメモの存在を確認しようとしたら、何も指に触れなかった。  おかしい。  右側のポケットに入れたはずなのに。  私は首を傾げた。  部活の時間が迫っている。  私はメモのことを考えるのは一旦後にして、部活を楽しんだ。  部活が終わった後。  なぜかポケットに違和感がある気がして手を当てると、何かが入っている感触がした。  私の書いたメモがやっぱりポケットに入っていた、とかじゃない。  もっと細長くて硬いもの。  そう、ちょうどボールペンのような。  ポケットの中身を取り出すと、新品の赤のボールペンとシャープペンシルの芯が入っていた。  放課後に買おうと思ってメモに書いた物が。  いくら探しても買い物リストのメモは見つからなかった。  まるでボールペンやシャープペンシルの芯と入れ替わるかのように、メモは消えていた。
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