ポケットは想いを届ける

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 私は何か欲しい物があるとメモに書いてポケットに入れるようになった。  魔法のポケットは高い物は対象外のようで、メモは私のポケットの中から消えることなくそのまま居座っていた。  一方でのど飴とかティッシュとか、ちょっとした物ならプレゼントしてくれた。  一度ジュースをリクエストした時には500 mlのペットボトルのオレンジジュースがポケットから出てきて、思わずペットボトルとポケットを見比べてしまった。  どうしたらこのサイズの物がポケットから出てくるわけ?  リクエストしたのは私だけど。  たまにポケットにちょっとした物をもらいながら過ごしていたある日、定期試験の成績が返ってきた。  志望校に合格するために何とか順位をあげたくて風邪をひいてものど飴をなめながら必死に勉強したのに、逆に順位が下がっていた。  努力が報われないって、つらい。  成績が落ちた愚痴を、メモ帳に汚い字で殴り書きした。  メモ帳から紙を破りとり、ポケットに適当に突っ込んだ。  制服のポケットが魔法のポケットだと気づいてから、ポケットにメモを入れる癖は直るどころか加速していた。  ポケットの中に入れた愚痴は、いつの間にか消えていた。
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