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ポケットの中に、メモを入れた。
いや、入れようとした。いつも通り、欲しい物を書いたメモを。
ポケットの中にはすでにメモ用紙が陣取っていた。
取り出してみると、それはいつのまにかなくなっていたはずの成績の愚痴を書いたメモだった。
私の視線は、メモの下の方の余白に吸い込まれた。
そこには『大丈夫。頑張れ』と角張っていて堂々とした綺麗な文字で書き込まれていた。
これって、愚痴に対する励まし、なんだろうか。
私は制服のポケットから手が生えてメモに書き込む様子を想像した。
ニョキリと生えたその手は、私が寝ている隙にこっそりとペンを持って……。
いやいやそれはないない。
これはもしかして、誰か人間が書いたのではないだろうか。
私の書いた愚痴を読んで。
試しにその人に手紙を書いてみることにした。
もしかしたら、その相手は人間ではなくポケット自体かもしれないけど。
『あなたはだれ?』
シンプルな質問を書いてポケットに入れる。
もし返事が帰ってきたら、どうしよう。
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