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『ミナト。君は?』
その日の夕方。
ポケットから出てきた紙は『ミナト』さんからのお返事だった。
本当に返ってきた。
私は目を見張った。
ミナトさんって、どこの誰なんだろう。
ポケットの名前がミナトだったりして。
今までなくしたメモは、全てミナトさんの元に届いていたのだろうか。
もし欲しい物リストもミナトさんに届いていたとしたら。
『私はナノ。もしかして、今までボールペンやのど飴をくれていたのはあなたですか?』
『そうだよ』
どうやら、ポケットにメモを入れるとミナトさんに届くようだ。
私はミナトさんの返答に頭を抱えた。
魔法のポケットじゃなくて、親切なミナトさんが用意してくれていたなんて!
そうと知っていたら、あんなにいろいろ注文しなかったのに。
『ごめんなさい。制服のポケットに魔法か何かがかかってて、欲しい物をプレゼントしてくれてると思ってました』
それだけ書いてポケットに突っ込んだ。
翌朝。
登校しながらポケットに手を入れると、ミナトさんから返事が来ていた。
『いいよ。君もポケットでこのメモをやりとりしてるんだね。制服ってことは中学生か高校生? おれは高1。スマホはさすがに買えなかった』
同い年だった!
やっぱり、ミナトさんはポケットではなく人間だったらしい。
スマホと書かれたメモを見て、ミナトさんは困った末に絵を入れてくれたんだろうな。
『私も高1です。君もってことはミナトさんもポケットでやりとりしてるの? 今までいろんな物をくれてありがとう。何かお返しをさせてください』
『同級生じゃん。ミナトでいいよ。敬語は無しで。そ、制服のブレザーの腰ポケット。お返しなんていいのに。おれが勝手にしたことだから』
『分かった。ミナト。いいからお返しさせて。何か欲しいものとか趣味とか、ない?』
ミナトは優しい。
横柄な私のリクエストに応えていろんなものをくれた上に、お返しはいらないなんて言うのだから。
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