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『うーん、欲しい物はないかな。趣味はサッカーとミステリー小説』
『ミナト、ミステリー小説好きなんだ! 私もだよ。欲しい物、本当に何もない? 貰いっぱなしだと申し訳ないよ。サッカーの用具とか?』
夕焼けに照らされる教室で、ミナトからの返事を待っていた。
夕方になるとミナトからの返事がぴたりと止まったので、私にはすることがなかった。
グラウンドからサッカー部の声が聞こえて、教室の窓から見下ろした。
ミナトくんの趣味だというサッカーを楽しむ男子たちを眺める。
その中には、同じクラスの片瀬湊人くんの姿もあった。
一瞬片瀬くんはミナトなのではないかという考えが頭をよぎったけれど、そんなわけないと自分で否定して苦笑した。
片瀬くんは切れ長の瞳が印象的ないわゆるイケメンで、サッカー部だということもあって女子からモテていた。
人気者の片瀬くんが私なんかとポケットを介してやり取りをするわけがない。
私もイケメンで優しい片瀬くんに憧れていたけど、周りの女子にそんなことを言ったら身の程知らずだと言われそうで、誰にも言ったことがなかった。
サッカー部が片付けを始めた。
片瀬くんはボールを2個両腕に抱えて、別のボールを蹴りながら体育倉庫に向かって走っていた。
窓の桟に肘を置き、頬杖をついて片瀬くんを眺めた。
器用だな。どうやったら自由自在に脚でボールを操れるんだろう。
かっこいいな。
ボールを片付けた片瀬くんは、他のサッカー部員と肩を組みながら校舎の方へ戻ってきた。
その時片瀬くんが教室の方を見上げた気がして、私は咄嗟に後ろを向いてその場にしゃがみ込んだ。
見てたの、バレてないかな。
心臓が全速力で走った後のように音を立てていた。
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