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もう一度、自分のグラスを軽く七海のグラスに合わせた。
自分のグラスの日本酒を一気にあおり、そのまま七海のグラスの中身も飲み干す。
「七海の希望通りのフルーティーで香りの強い日本酒だったろ」
七海のグラスの日本酒はやはり風味が無くなっていた。
「何年先になるかわからないけれど、いつか僕がそっちに行ったら、また一緒にお年越ししような」
《明けましておめでとう。あっ、忌中になるから、おめでとうはダメだったか。でも、忌中の大元の私が言うんだから許してね》
続けざまにメールが届く。
《それと、一緒に過ごせるの今回が最後とか思っているでしょ。はい、ざんねーん(笑)。盆と正月は彼岸から此岸にいきますので〜。でもね、大地に素敵な人が現れたら、私はおとなしく実家に行きますので安心してね》
そんなこと、今気にすることじゃないだろうに。
《なんてかっこいいことを言いながら、画面が滲んで見えてきたので、私からのメールはこれが最後になります。大地、私を選んでくれてありがとう。大地で良かった》
それっきり、僕のスマホに七海からのメールが届くことはなかった。それとともに、七海のグラスに注いだ日本酒の風味が消えることもなくなった。
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