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「ねえ、なますって好き?」
「えっ、なます? あのおせちに入っているやつ? 好きも嫌いも何もお正月しか食べないし、縁起物として食べているから好きか嫌いかと言われてもなあ」
「じゃあ、栗きんとんは?」
「ああ、栗きんとんは好きかなぁ」
「私も栗きんとん、大好き。でも、不思議だよね」
七海が窓の外に視線を移した。その先には、すでに葉が落ち、来年また満開の花を咲かせるための準備に入った桜の木がある。
「大好きなのに、おせち料理でしか食べないよね。お正月だけの特別な食べ物みたい」
そう言われてみると、栗きんとんだけじゃなく、伊達巻きやなますも正月以外あまり食べた記憶がないな。スーパーでは売っているんだろうけれど、買おうと立ち止まったことはないかもしれないし、食べたいから買ってきてとも言った記憶はないな。
「確かにそうだね」
「夏にさ、おせち料理食べたらどんな気分なんだろうね、試してみたいな」
真夏のおせち料理。どうなんだろう、想像もできない。七海はたまにこういう疑問を持ったり、提案をしてきたりする。それが僕はたまらなく好きで、そんな疑問や提案ができる七海を尊敬もしている。
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