1. 聖者の失墜

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 あれから四年、ようやく黄泉の国から帰還したシャーロットは突きつけられた現実にショックを隠しきれなかった。なんと、自分がいない間に婚約者のザカリーが妹のリリアナとすでに結婚していたのだ。  それだけでなく、周囲の自分に対する態度の変わり様にもひどく困惑してしまった。父も母も忠実だった聖騎士達も従者さえも、全員がシャーロットに対して態度が冷たく、蔑み軽蔑の目を向けてくるのだ。その理由が分かった時、彼女はまたも愕然とした。  聞けば、あの時ザカリーを助けたのは妹で、自分は婚約者を見捨てて行方をくらませた事になっている。聖者でありながら職務を放棄し、国や婚約者を見捨てた事に周りはひどく失望し、そして相当腹を立てていた。  誤解だと訴えても、今さら誰もシャーロットの言葉を聞いてくれる者はいなかった。何か言えばその倍以上も彼女は非難されるのだ。  それでも諦めきれないシャーロットはリリアナに本当の事を言う様にと何度も強く訴えた。だがリリアナは小馬鹿にしては笑うだけで全く聞く耳を持ってくれない。ついには自分を殺そうとしたとしてシャーロットに罪を着せるのだった。  王太子ザカリーは妻を殺めようとしたシャーロットを許せずに即刻処刑を言い渡した。これを受け全員が彼女を稀代の悪女と言っては罵り、処刑となった事をざまあみろと喜んだのだ。  彼女に向けられているのはもはや憎悪だけだった。過去に成し遂げた偉業や受けた恩など、すっかり人々の記憶から消え去っている。それどころかシャーロットは偽物だったと、リリアナこそが真の聖者だったのだと彼らは信じて疑わない。  これには聖痕の有無が関係していた。人々にとっては聖痕こそが全てだった。聖痕こそ正しき者の象徴であり、それを有するリリアナは皆にとって紛れもない正義の証なのだ。もはや聖痕を持たないシャーロットなど、偽物以外の何者でもない。  こうして、今まで国や人の為に身を削り懸命に尽くしてきたシャーロットは、あろう事かその国の人々によって裁かれ処刑される事となったのだった。
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