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——私はいつも貴方に問いたくなる。
その場所に居て幸せですか、と。
お昼どきの社員食堂は相変わらず賑わっている。社員食堂といってもそこら辺のレストランと比べても遜色ない。全面ガラス張りの解放感がある店内、最上階から見える景色、豊富なメニューとその味。私が入社する数年前にフルリニューアルをしたらしい。なんでもカフェを経営している会社が運営しているのだとか。繁盛するのも頷ける。
「ねぇ、今どんな気分? 長年想い続けた忘れられない男に5年ぶりに再会するって」
向かいに座る同期の梨乃さんは、かつ丼を豪快に頬張りながら明け透けに質問を投げてきた。
切長の目が印象的で容姿端麗。クールビューティーといえばそうなのだろう。「男が寄って来ないんだよねー」とよく愚痴っているけど何となくわかる。綺麗すぎるのだ。
それに加えて厄介なのは、仮に勇気を振り絞って話しかけたところで、よっぽど気の利いた話をしない限り「つまんない」とバッサリ切り捨てられてしまう。私は何度かその局面を目の当たりにしたことがあるけど、その気まずさといったらない。当の本人は全く気にしていないところが輪をかけて厄介だ。
良くいえば素直な人なのだろう。今だって冗談の要素は一切なく、単純な興味で私に質問をしているのだから。
入社以来、かれこれ11年の付き合いだけど、こういうところは昔から変わっていない。
11年……。ということは、長谷川さんと出会ってからも11年。ため息が出そうになる。
「まだ会ってないからわからない。別に健気に想い続けてるわけじゃないけどね。あの人を超える人が現れないだけで」
「まだ会ってないの? 杏奈ちゃんのことだからいの一番に会いに行ったかと思ったのに」
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