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『明けても暮れても
僕は叫ぶ
この世に存在するただ一つの言葉
君の名前を僕は叫ぶ
君しかいない世界で
僕は愛を叫ぶ』
「ほ〜〜」
詩集を胸に抱きしめた。ため息しか出てこない。「君」の部分に自分の名前をあてはめる。
『香しかいない世界で
僕は愛を叫ぶ』
叫ばれてみたい!
生まれてこのかた文芸に興味を持ったことなどなかった。その私をとりこにしたのは覆面詩人の桜庭ハローだ。
夏休みに読書感想文の課題が出た。本を読むのが苦手な私が選んだのは詩集だった。これなら簡単に読める。そんな単純な理由から手に取った一冊の詩集。
『僕は歩キング
フォー
どこまでも歩けるよ歩キング
フォー
君を探しに歩キング
フォー
君に会うまで歩キング
フォー』
意味が分からなかった。詩ってこんなんだっけ? 意表を突かれた。でも興味を持った。もっと読みたいと思った。
それからハローの詩集を買い集め読み漁った。純粋でまっすぐな表現に胸が熱くなった。
いったいハローってどんな人なんだろう。本名も、住んでる所も顔も性別も年齢も、全てが謎に包まれている。
会いたい。ハローに会いたい。
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