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仕事が終わり会社に戻ると私は山田さんの後を追った。
「山田さん、聞きたい事があります!」
山田さんが春夫さんと一緒に車に乗り込もうとしていた。
「なんだ?」
「息子さんがハローなんですか?」
山田さんは否定した。でも私はハローへの愛を切々と語り、ハローの詩をいくつか暗唱してみせた。山田さんは迷惑そうな顔をしていた。春夫さんは車の中でひたすらノートに書き物をしていた。
『咲った
タンポポが咲った
土から生まれた
ママはいつ咲うの?』
ポエムだ。でも、ママ?
山田さんは大きくため息をついた。
「ハローの正体を知ってどうするんだ」
そう言われてハッとした。正体を知ってどうするのか。会ってどうするのか。考えた事もなかった。
友人になりたい、恋人になりたい、私のために詩を書いて欲しい。そんな事を思ったりもした。
「世の中には知らない方がいい事があるんだ」
山田さんが車に乗ろうとした。
知らない方がいいのだろうか。想像の中のハローにずっと憧れていれば良いのだろうか。
でも私は会いたかったのだ。例えハローがどんな人物だろうと会いたかったのだ。その夢を叶えるために毎日掃除機がけをしてきた。私をここまで突き動かしたハローに会わなければ絶対後悔する。
私は慌てて山田さんの服の裾を掴んだ。
「会って、ありがとうって言いたいんです。素敵な詩をありがとう、私はやる気を貰いました。詩が好きになったし、花や自然に関心を持つようになりました。ハローの詩と出会わなければ私はやる気のないダメ人間になってました」
私の言葉を聞き、山田さんは少しだけ微笑んだ。
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