花園ポエマー

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 会社は清掃会社だ。作業着は地味なねずみ色。重い清掃道具を運び、廊下や空いている教室を掃除する。オシャレをして楽しそうに大学を闊歩する同年代の女の子を横目で見ながら掃除機をかける。  でもちっとも辛くなんかない。この大学のどこかにハローはいる。そう思うと業務用掃除機なんて軽いものだ。 「おい、ゴミがあるぞ」  指導してくれているのは山田さんだ。私からすればおじいちゃんくらいの年だが、力もありとても良く動く。負けていられない。 「すみません!」  床を凝視しつつ、再び掃除機がけをする。その後ろから山田さんがモップをかける。無駄口はひとつもたたかない。真面目で実直。ちょっと取っ付きにくい感じの人だ。 「昼飯だ。車に戻るぞ」  大学には学食もあるしカフェもある。でも私たちはあくまでも出入り業者。掃除で汚れている自分たちは未来ある若者に近づいてはいけない……と山田さんはいう。  私だって未来ある若者だ。すれ違う学生を見る。お風呂に何日も入ってなさそうなガリ勉風の学生、化粧や香水をこれでもかとつけてる女学生。私の方が清潔だと思う。  大きな大学だけあってたくさんの人が行き交う。この中にハローはいるのだろうか。もしかして今すれ違った人がハローなのではないか。  早く会いたい。
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