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男性が貼り終えると私はチラシに張り付いた。発売は来月と書いてある。でもその下に「生協で先行発売」と書いてあった。生協? 生協って町でたまに見かけるスーパーの事だろうか。
「生協……生協……」
「生協なら管理棟の横にありますよ」
無意識に「生協」と呟いていた私に、男性が話しかけてくれた。
「え? 大学の中に生協があるんですか?」
「生協っていっても町にある生協とは違うよ。高校の購買部みたいなものだよ」
「文房具とかパンとか売ってるお店の事ですか?」
「うん。ハローの本買いたいの?」
「はい。全部持ってます」
「それはありがとう」
「え、もしかしてあなたが……ハロー?」
まだ若い。でも学生とは違う落ち着きがある。爽やかて清潔感のあるこの男性がハローなのだろうか。
「残念ながら僕はハローじゃないです。詩集作りのお手伝いをさせてもらってます」
「あなたは教授さんですか?」
「いえいえ。教授の助手をさせてもらってるだけです」
「じゃあハローに会った事あるんですか?」
「ううん。僕は原稿しか見た事はないよ」
「そうなんですか……」
少しがっかりした。でもハローの生の字を見た人に会う事ができた。そして新刊を発売前に買えると知った。これはラッキーだ。
「来週の月曜日から生協に並びます。よろしくね」
「はい、絶対に買います。ありがとうございました」
嬉しくて午後の仕事はすいすい進んだ。
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