花園ポエマー

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 今日からは農学部だった。大学の外れの端っこ。文学部からは遠かった。床も土で汚れていて掃除は大変だ。 「昼飯だぞ」 「あの、ちょっと買い物してから行きます」 「買い物?」 「生協で欲しい物があるんです」 「ふぅん。早く戻って来るんだぞ」 「はい!」  私は生協へ走った。行った事はなかったが山田さんには内緒で通りすがりの学生さんに場所を聞いておいた。  たくさんの人だかりができていた。恐る恐る近づく。まるで大きめのコンビニみたいだった。お弁当やジュースはもちろん、文房具や書籍、旅行会社まであった。  本はどこだろうと生協の奥へと進む。 「あった!」  本棚の前に平積みになっていた。おもむろに手を伸ばし本を手に取った。  「花束を君に」と題された詩集。背景は可憐な花が咲き乱れる花畑の風景だった。  あれ、この風景……農学部の花畑だ! 季節が違うので咲いている花は違うけど、後ろに見える林や山はおんなじだ。  ハローは農学部の花畑に来るのだろうか。そこで詩を紡いでいるのだろうか。  1枚ページをめくった。
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