デジタル王国の崩壊

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 ローマ帝国より長命だったサトー王国の終幕は、実にあっけなかった。原因は、ちっぽけな生物である。一匹の羽虫だ。  ある日、機械工が整備のために、巨大コンピューターのある部屋に入った。その時に機械工のズボンに張り付いていた虫が、紛れ込んだのだ。  それはコンピューターを冷やす風を避けるため、暖かい機械内部の奥に潜りこんだ。当然のごとく虫は感電。焼け焦げて塵と消えうせ、同時にコンピューターもデータを消失した。  この精密機械の重大エラーを直せるほどの機械工は、すでにデジタル王国に移住している。サトー王が残した『取扱説明書』は電子化したが、デジタル王国に保存しっぱなしでコピーを取らず。  念のため金庫に入れておいた紙の『取扱説明書』は、時がたって肝心な部分が色あせていた。解読不能である。  こうして人類英知の集合体であるデジタル王国は、崩壊した。 〈 了 〉
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