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一昨年
***
『先生の初恋って、いつですか?!』
それを聞いて思い出す。
まだ俺が22歳。
一昨年のことだ。
教師になる、前のこと。
人生のどん底にいた。
前兆はなかった。
いつのまにか、庭の雑草が枯れてたみたいに、冬が来るのと同時に、地獄は来た。
仲間に裏切られ、起業したばかりの会社が倒産。
恋人はおらず、友人もそいつら以外おらず、縁を切った両親に頼ることもできず、
金を失い、人を失い、家を失い、もう、何も残っていなかった。
公園のベンチでひとり、遺体みたいな目をして座っていた。
そんなときだった。
「ねえ、お兄さん」
見上げれば、ブレザー姿の少女が、俺を見下ろしていた。
思えばそれが、初恋の前兆だった。
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