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僕の姿を見て、すぐに彼女は悟ったようだった。
僕は、再び彼女の前に跪いた。
「君が悲しくならないように、僕がここから連れ出してあげる。一緒に暮らそう。今度こそ、僕が幸せにするから」
彼女の目から涙が溢れた。でも彼女は、あの時と違う言葉を口にした。
「ごめんなさい。私は、一緒には行けないの。あなたは、もう……」
僕の前で、彼女は泣き崩れた。
明らかな拒絶に、頭の中が真っ白になった。
「僕の気持ちは変わらないよ。今でも君のことを愛してーー」
言いかけて、ハッとした。
そして、ようやく気がついた。
目の前の鏡に、自分の姿が映っていないことに。
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