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【四】久しぶりのホテルと玩具(★)【子持ちのシングルファーザーに需要はありますか?:彼方×朝儀】
――彼方さんとホテルに来るのは久しぶりだ。
藍円寺朝儀は、そう考えながら、頬を染めていた。その白い手を、彼方が握っている。朝儀本人は、『自分が』、六条彼方を手に入れたと考えているが、実際はどうなのか。
二人が愛人関係を超えて恋人関係になって、早一年以上。
彼方から見れば、愛しい朝儀を手に入れたのは己の方なのだが、朝儀はそれを知らない。高級ホテルの一室に入ってすぐ、彼方は朝儀を抱きしめた。その引き締まった腕に触れながら、朝儀は非常に幸せそうな顔をしている。
「朝儀さんが、好きだよ」
「僕も彼方さんが好き」
そんな事を言い合ってから見つめ合い、二人はキスをした。
さてこの部屋――事前にチェックインした彼方が既に様々な準備を行っていた。
藍円寺朝儀は、ドMである。そして、彼方はドSなのだと、今尚朝儀は信じているが、単純に彼方は朝儀が欲しかったから、SMの知識をつけて、体から篭絡したに過ぎない。
「シャワーを浴びてくるね」
朝儀はそう述べると、浴室へと消えた。そして温水をかぶりながら、既にゾクゾクする体を抱きしめた。彼方といると、本当に満たされる。たっぷりの白い泡で体を洗った朝儀は、今宵に思いを馳せる。明日まで、一緒にいる約束をしているのだ。
濡れた髪をタオルで拭きながら朝儀がシャワーから出ると、彼方が微笑した。
「食事をする前に――朝儀さんが欲しいな。最近、会えなかったから」
「僕も彼方さんが欲しいよ」
そのまま抱き合い、二人は寝台にもつれて転がった。こうして、こちらも姫初めまで待てない少し早い夜が訪れたのだった。
「ん、ン」
口にボールギャグをはめられた朝儀は、潤んだ瞳で彼方を見上げる。寝台の上で、開脚状態――後ろで手首には手錠をはめられている。膝を折り曲げて開脚している朝儀の陰茎に、彼方は手をかけている。その根元は、黒い革製のリングで拘束されている。
朝儀の両方の乳首では、彼方が送ったボディピアスが輝いている。
「ふ、ッフ……ん、ふ……」
後孔にはローターが入っていて、規則的に振動している。このように、ひとしきり玩具を使われるのは、ここ最近では久方ぶりの事だった。感じ入りながら、朝儀は全身を震わせる。柔らかな茶色の髪が、白い肌に汗で張り付いている。
その時、パチンと音を立てて、彼方が朝儀の口と陰茎から戒めを外した。
「あぁ……ぁ」
「気持ち良い?」
「う、うん……あ……」
「足りないだろ? 朝儀さんは、ドMだもんな? その淫乱な体じゃ」
「っ、ぁ……言わないで」
「否定しないのか?」
「う、うあ……は、早く。彼方さんが欲しい」
「堪え性が無い駄犬には、どんなお仕置きがいいかな」
「やぁ」
彼方が音を立てて朝儀の乳首を吸う。そうしながら、垂れ下がっている輪っか状のピアスを引っ張った。その刺激だけで、朝儀は果てた。既に開発されきっている乳首は真っ赤に尖っている。
「勝手にイったな」
朝儀の放ったものが、引き締まった彼方の腹部を濡らす。肩で息をしている朝儀からローターを引き抜き、その時彼方が陰茎を進めた。一気に深々と穿たれて、朝儀は咽び泣く。
その表情を見てから、彼方は優しく笑った。
「――といった言葉責めが好きなのは知ってるけど、俺は朝儀さんを甘やかしたい」
「っ、ぁ……」
彼方は朝儀の細腰を掴むと、穏やかに体を揺さぶる。それから緩急をつけて動き始めた。その度に、朝儀の口からは嬌声が溢れる。こうして二人は何度も交わった。
――事後。
彼方の腕の中に収まって、抱き枕された状態で、朝儀は彼方を見た。
「僕、優しい彼方さんも好きだよ」
「知っているよ――そうだ、少し早いけど、夕食にしようか? 日付が変わる頃には、そばもまた食べるし」
「うん」
その後二人は改めてシャワーを浴び、それぞれ着替えた。そうして手を繋いでエレベーターへと乗り込む。大の男が手を繋いでいる姿を誰かに見られたらと思えば気恥ずかしいが、幸い周囲に人気は無かった。
二人で向かった先は、一階のレストランである。このホテルには、一階に三つのレストランがある。その内の一つの前を通り過ぎる時、朝儀は見知った顔を見つけた。既に彼方からは手を離して歩いていたのだが、別段見られて困る相手ではない。
食事をしていたのは――、玲瓏院縲である。
嘗て、朝儀の同僚だった人物だ。朝儀の三つ年下である。だが朝儀から見ても若くて艶っぽい。クォーターだという話しで、くすんだ色の天然物の金髪と、緑色の瞳をしている。その対面する席に座る相手を見て、朝儀は複雑な心境になったが、気にしない事にした。
「その店の方が良いか? 隣の店に予約を入れているんだけど」
「ううん。僕は彼方さんが選んでくれたお店がいいよ。ただちょっと見ていただけだから」
柔和に微笑し、朝儀はそう述べた。
朝儀のそんな優しい所が、彼方は愛おしくてやまない。
こうして二人でレストランへと向かった。彼方といられるひと時がどうしようもなく幸せに思えて、朝儀は終始笑顔を浮かべていたのだった。
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