【六】来年も(★)【ブラックベリーの霊能学:火朽×紬】

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【六】来年も(★)【ブラックベリーの霊能学:火朽×紬】

「縲はまだ帰ってこないの?」  時計を見ながら僕が言うと、牛乳パックを傾けていた絆が顔を上げた。絆も今年は、ちょっとだけブレイクした。兼貞さんとセットというイメージ戦略は、成功していると思う。事務所が違ってもそういうのって出来るんだなぁ。 「お祖父様もさっき探していたな」  絆はそう言うと、呆れたような顔をしてから、時計を見上げた。祖父の、玲瓏院統真が一足先に玲瓏院家のお寺へと向かったのは、もう二時間は前の事だ。 「良いお年をって言いたかったんだけど、そろそろ僕も行かないと」 「――俺も出かける用事がある」 「兼貞さんと?」 「お、お前こそ火朽君とか?」 「僕は火朽君と今年も御遼神社の初詣に並ぶつもりだよ。絆はいつ帰ってくるの?」 「……久しぶりのオフだからな。ま、まぁ? て、適当に、その」 「良かったね。去年までは仕事が本当に無かったのに」 「うるさい!」  僕の言葉に絆が牛乳を吹き出しかけた。兄の活躍が、僕は嬉しい。 「じゃあね、絆。良いお年を!」 「ああ。紬も。火朽君にもよろしく伝えてくれ」 「兼貞さんにもね!」  こうして僕は絆と別れて玄関へと向かった。巫女さんのバイトをしている、楠原の所に、ゼミのメンバーで集合して初詣の予定なのだけれど、それが終わったら、僕は火朽君と二人で、絢樫Cafeに行く事になっている。火朽君の部屋に遊びに行く。  なんでも今年はローラさんは藍円寺へ、砂鳥君も御遼神社へ泊まりらしく、絢樫Cafeは僕達だけになるらしい。僕は火朽君の部屋には行った事が無いから、ドキドキする。その後僕は、御遼神社を目指してバスに乗った。  到着すると、既に並んでいる人々が見えた。僕は人ごみを一瞥してから、待ち合わせ場所へと向かう。すると、時岡と、南方が手を繋いでいた。男女の恋人同士であるから、堂々としていられる――のか、誰も見ていないと思ってイチャついていたのかは知らない。ゼミ公認の恋人関係の二人は、どちらかといえば控えめだ。付き合っていると、僕と火朽くんは無論公言していないけど、客観的に考えて、僕達の方がべったりしているような気がしないでもない。まぁ、南方と楠原の女子二名は、学内では一緒にいる事が多いし、同性同士の親友として見られているはずだから、僕と火朽君にも不思議はないと思いたい……。 「仲が良いですね」  その時、僕の隣に立つ気配があった。見れば微笑している火朽君がいた。僕達は、ほぼ同じ時間に到着したらしい。僕達の姿を見ると、時岡と南方が、勢いよく離れた。あからさまに照れている。そこへ、宮永と、日之出君も合流した。  このメンバーで、同じゼミだからという理由で顔を合わせるのは、もしかしたら、今年で最後かも知れない。僕と火朽君は、大学院に進学するから一緒だけど、他のみんなは就職組だ。それが少し寂しい。だけど、卒業したら会えないという事もないと思う。  そんな事を考えていたら、人ごみの中に、砂鳥君と、以前テーマパークへと来ていた、水咲君という少年がいるのが見えた。多分水咲君も人間ではないと僕は思っている。ただ同年代の見た目の二人が、楽しそうにしている姿を見ていると、どこからどう見ても、人間にしか思えない。  こうして僕らは並んで進んでいき、無事に初詣を終えた。  ――その後。 「楽しかったですね」  絢樫Cafeへと、タクシーを拾って戻った火朽君と、一緒に来た僕は、真っ直ぐに部屋へと向かった。火朽君のお部屋は、良い匂いがする。僕も同じお香を持っているから、なんだか嬉しくなってしまった。 「うん、来年も行こうね」 「ええ。再来年も」  僕達はそんな事を言い合ってから、視線を交わした。すると立ち上がった火朽君が、寝台に座っていた僕を正面から抱きしめた。その温もりが嬉しくて、僕は彼の腕に両手で触れる。そのまま静かに、唇を重ねた。  ドサリと音がしたと思った時には、僕は押し倒されていた。  火朽君の首に腕を回して、僕は思わず笑顔を浮かべる。 「その次の年も、その次も、ずっと一緒にいたい」 「僕もです。初詣に限らず、様々な所に、色々な場面で」  そのまま再度、唇を重ねた。そうしながらするすると火朽君が僕の服を脱がせた。僕もまた火朽君の服に手を伸ばす。火朽君が寝台の上に上がってきたので、それからも何度もキスを重ねながら、お互いに服をはだけあった。 「ん、ぅ……ッ、ぁ」  火朽君の陰茎が挿ってきた時、僕は背をしならせた。挿入の衝撃には、まだ慣れない。お互い、実家と絢樫Cafeだから、中々二人きりになれる場所もなく、一緒にいる時間は増えたけれど、体を重ねた回数自体は、そう多いわけではない(と、僕は思っている)。 「あ、あ、あ」  深く僕を貫いた火朽君が、緩慢に腰を揺さぶった。刺激が全身に響いてくる。 「もっと声を聞かせて下さい」 「ん、ぁァ……恥ずかし、っッ、あ……――ん!!」  火朽君の動きが早くなった。肌と肌がぶつかる音がする。  感じる場所を強く刺激され、僕は必死で息をした。いつも火朽君は余裕たっぷりの顔をしているから、すぐに余裕を失ったしまう自分が嘆かわしい。 「あ、ああ……あア!」 「愛しています」 「僕も――ん、ぁあ、あああああああ!」  一際強く打ち付けられた時、僕は果てた。同時に、火朽君の放ったものを、内部に感じた。汗ばむ体で、僕はシーツに沈む。僕から陰茎を引き抜いた火朽君が、隣に寝転んだ。 「まだまだ夜が明けるまでには時間がありますね」 「うん……」 「姫初めは、続行です」 「ん!」  その後再び唇を奪われた。そして体勢を変えられて、再び挿入された。  こうしてこの夜、僕達は散々交わっていたのだった。
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