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「でも腕は確かだ。恐らくあいつは俺が雇っている傭兵のうちで最強だぞ。ニナは見る目があるな」
にやりと笑って褒めてくれたイグニスに、新菜は曖昧な笑みを返した。
いえ、単純に彼以外の傭兵を知らなかっただけなんです、などと野暮なことは言わずにおく。
底知れないラオの強さは実際に刃を合わせて実感した。
だからこそ、新菜は彼に教えを乞い、その強さに近づきたいと思ったのだ。
白い上等な布地に針を刺し、糸を縫い付け、針を引っ張り出す。
また一針縫っては針を刺し、抜いて、また針を刺す……
「……飽きた」
新菜はオレンジ色のドレスに身を包み、私室の椅子に座って刺繍をしていた。
製作途中の刺繍を傍らの小卓に置いて眉間を揉む。
細かい作業をしていて目が疲れた。
肩を叩きながら視線を横にスライドさせれば、豪華な天蓋付きのベッドが目に映る。
天蓋のレースカーテンは金と銀の糸で星の刺繍がなされている。
初めてこのベッドで眠るときは、魔法のランプの灯を受けて煌く星をうっとりと眺めたものだ。
魔法のランプ、というのは魔導具だ。
魔導具は定期的に内蔵された光石を交換しなければならないため維持費用がかかる。
魔導具本体が破損したり、不具合が起きた場合は重ねて修理費用も必要だ。
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