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まさかの異世界転移
暖かな日差しが降り注ぐ、美しい森の中。
桜にも似た、白い雪のような花びらを散らす大樹の根元にて。
平岡新菜は一人ぽつんと膝を抱えていた。
晴れ渡った青空を見上げ、風に吹かれて呟く。
「……ここはどこ?」
それは、目下最大の悩みにして切実な問いだった。
答えはない。
平和な鳥の鳴き声が聞こえてくるばかり。
「よくぞ来られた、異世界の戦士よ……お前を待っていた」と、説明役の王様が現れることもない。
女神や妖精が出てくる気配もない。
(もういっそ悪魔や死神でもいいから、誰かこの状況を説明してくれないかな……)
何が起きているのかさっぱりわからないというのは、全くもって理不尽極まりない。
二月の今日は朝から雪が舞うほど寒かった。
高校の帰り道、新菜はうっかり雪を踏んで足を滑らせ、歩道橋の階段のほとんど最上段から転落し、頭を強く打った。
そこで新菜の人生は終わった……はずだったのだが。
次に目を開いたとき、新菜は見知らぬ大樹の根元、森の開けた場所に倒れていた。
酷くぶつけたはずの後頭部は全く痛くなく、身体はいたって健康そのもの。
着ているものは転落時と変わらず、セーラー服に白のロングソックス、黒のローファー。
季節にそぐわない紺色のダッフルコートは脱いで傍に置いている。
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