侯爵邸へようこそ

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「断るわけがないと思っていたからな。ニナは向上心が強く、好奇心旺盛で賢い。ハクアからそう聞いていたし、俺もそう思っている。励むように」 「…………はい!!」  優しい笑みに、新菜は目を潤ませて大きく頷いた。 (イグニス様も、アマーリエ様も、本当に素晴らしい方だわ……皆が慕うわけだ……)  この度量の深さ、素晴らしい人間性。愛されないわけがない。  目尻に浮かんだ滴を指で拭い、新菜は身を乗り出した。 「あっ、あの、イグニス様。もう一つお願いしても良いでしょうか?」  教育というのならば、いま一番学びたいことがある。 「なんだ?」 「戦闘訓練がしたいんです。図々しいとは思うんですが、できればラオさんに師匠になっていただけないかなと思ってまして……もちろん無理でしたらラオさん以外の方でも構いません。とにかく剣や魔法に優れた方に稽古をつけていただきたいんです。わたしは昨日の一件で自分の無力を痛感しました。もっと強くなりたいんです、お願いします!」 「なるほど。そういうことなら協力は惜しまない。望み通りラオを呼ぼう」 「ありがとうございます!!」  新菜は歓喜し、胸の前で両手を組み合わせた。 「しかしラオを師として仰ぎたいとはな。うるさいだろう、あいつは」 「ええ、まあ、賑やかな方ですね」  ハクアとトウカが迷いなく頷くのを見ながら苦笑する。
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