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ほんの数分前、新菜は現状を確認するために森を歩き、そこで奇怪な生物と出遭った。
地面を這いずる、茶色のスライム状の何か。
魔物――RPGや漫画の中にしかいないはずのそれが、この世界にはいる!
とんでもない世界で目覚めたことを思い知り、新菜は青くなって後ずさり、そのまま逃げた。
そして、いまに至る。
「………………」
呑気に振ってきた白い花びらが視界を横切る。
(どうすればいいのかな……)
救いを求めるように、足元の赤いキノコを見る。
無論、キノコは喋らない。
目を覚ましたときは信じられなかった。
自分の身に起きた奇跡に戸惑いながらも、ありがとう神様、と心から感謝した。
しかし、何故異世界なのだ。
異世界に憧れがないとは言わない。
むしろファンタジーは新菜の大好物だ。
RPGで遊んだりライトノベルを読むたびに、自分もこんな冒険がしてみたい、現実を捨て去りたいと夢想したことはある。
でも、まさか本当に我が身に起こるなんて、誰が想像するだろう。
百歩譲って異世界転生を許したとしても、魔物が徘徊する森の中に放り出すなんてあんまりだ。
神様が十五歳で死んだ少女の不幸を哀れんで奇跡を起こしたというのなら、せめて街の前に横たえるくらいの親切心を発揮してくれたって良いではないか。
新菜はごく普通の女子高校生だ。
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