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大事な友達なんですね、と言ったら、ハクアは否定しなかった。
トウカと同じく人間嫌いなハクアだが、イグニスとアマーリエは彼にとって特別なのだ。彼に友人と思える人間がいることを新菜は嬉しく思っていた。
できることならずっと良好な関係を保っていてほしいし、彼らに仕える侯爵家の使用人からも好かれていてほしい。
つまりこれは、新菜の願いにも似たわがままだ。
ハクアは表情を変えなかったが、玄関の前で急に身を反転させた。
後に続いていた侯爵夫妻や使用人たちが止まる。
「さっきの台詞、言い直して良いか」
「? ああ」
不思議そうな顔で、イグニス。
「さっきの言い方は……その、冷たく聞こえたなら悪かった。どうもおれは口下手で、誤解を招きやすいらしい」
ハクアは詫びるように目を伏せ、玄関の扉を開けた。
「この際だから言っておく。お前たちが来るのは楽しみにしてるんだ。口には出さないが、トウカも同じ気持ちだと思う。だから、上がってくれ」
侯爵夫妻は唖然とした。
さきほど不満を覗かせていたメイドも、他の使用人たちと揃って目をぱちくりさせている。
数秒して、イグニスは噴き出し、アマーリエは上品に笑った。
その後ろでメイドも笑っている。
ハクアに対する評価が上方修正されたと判断し、ほっとした。
「どうしたのですかハクア、あなたがそんなことを言うなんて」
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