メイドとして働き始めました

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「森で変なキノコでも食ったか。それとも季節外れの雪でも降らせる気なのか」  イグニスが茶化すように笑う。 「でも、気持ちが聞けて嬉しいよ。お前はなかなか本音を話してくれないからな。俺も領主としての仕事に追われる日々の中で、この家を訪ねるのは楽しみの一つだぞ。なあ、アマーリエ」 「ええ。種族は違えど、あなたは私たちの大事な方ですから」  ハクアが困ったようにこちらを見た。  お前に従ったらなんか変な空気になったとでも言いたげだ。  新菜は背後で手を組み、にっこり笑った。  それを答えの代わりとしよう。   だって新菜はちっとも自分の発言を後悔していないのだから。  イグニスが確認を終えると、侯爵家の使用人たちは客間に置かれた品々を回収し、一足先に侯爵邸へ帰って行った。  入れ替わりに、トウカが客間へやってきた。  侯爵夫妻はトウカを歓迎した。  愛くるしい幻獣は半ば強制的に二人の間に座らされ、頭を撫でられたり尻尾を触られたりした。  トウカは逃げたりせず、これまであった出来事などを身振り手振りを加えて熱心に報告し、侯爵夫妻は頷いてそれを聞く。 (侯爵家の使用人は信用してないけど、この二人は別なのね)  ハクアが座るソファの斜め後ろに控え、幻獣と人間との微笑ましい対話を見守ること数十分後。 「へえー、それじゃあハクア様がお二人が結婚するきっかけになったんですね」
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