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証言者
最近、暴力団の抗争事件が頻発していた。今回の被害者はキャバクラ経営者と社員ではあるが、実態は街を牛耳る経済ヤクザだ。
いままでも被害者は全員ヤクザと舎弟だから、警察の中にさえ、街が綺麗になったと云う者さえいた。だが今回は、少々勝手が違っていた。
「本当です。刑事さん。社長が撃たれた時、VIPルームには三人しか居なかったんです」
被害者を接待していたママは、当時席を外していたという。
「しかし、部屋は誰でも出入りできたんですよね。駆けつけた警察官は直ちに現場を保存し、凶器を持った人物も目撃されていない。ママは犯行を目撃したんですか?」
「あ、いえ、それはその――直接は見てませんけど……」
「で、目撃者の女性従業員というのは?」
「探しているんですが、混乱で姿が見えなくなりまして――身体検査は本官が――その、婦人警官が現場に居なかったものですから、しかし凶器は所持していませんでした。店内からも発見されていません」
なら、犯人が持ち去ったと考えるのが妥当だろう。
「おまわりさん。ライターも持ってなかったんですか?」
「ライター?」
「いえ、その、ミキちゃんの前職はマジシャンって、云ってたものですから……」
「あぁ、劇場に魅喜って手品師居ましたね」
「マジシャンねぇ……」
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