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繁華街
「らっしゃい! らっしゃい! 年に一度の大安売りだ、この機会を見逃す手はないよ!」
年末の繁華街は幸せのオーラを発散する人たちが大勢行き交い、ざわめきと人いきれで群生を形作っていた。と、その一画で、異質な雰囲気を放つ男が二人、衆目を集めている。そこだけ周囲が避け、あからさまな真空地帯ができあがっていた。
気を張っても、人波は小柄な女の抗いを許さない。みるみるうちに、真空地帯の方へ流されてゆく。
危うく二人の男と接触しそうになる。高級スーツを着こなした、威圧感がほとばしる初老の男がジロリとした目線を向け、頭から足のつま先まで瞬時に人を値踏みする。その澱んだいやらしい視線を感じた瞬間、背筋には電流が走り、本能が逆らうな逃げろと強く反応した。
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