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しかし次の瞬間には、もう一人の男の鍛えぬかれた肉体を包むスーツに、群衆の中へと押しやられていた。
なにあれ、感じ悪い……。
彼らの後姿に、身震いを抑え深呼吸した場所が丁度、目的地の前だった。
繁華街アーケードの一画には、地域店の組合で運営されている無料案内所がある。仕事の性格上、職業案内も兼ねている。風俗産業の不動産屋といった塩梅で、所狭しと広告が貼られたガラス張りの窓には、艶やかに着飾った夜の蝶たちが多数微笑んでいた。皆、人形と見紛う可愛いらしい容貌を誇っている。
赤と白を基調にした店舗デザインはポップだけれど安っぽく、見る者の期待と不安感を煽っているようだ。
店舗のドアを開ける。
「らっしゃい!」
不愉快な気分を引きずりながら顔を出した通い慣れた店からも、不快感を感じさせる声で迎えられた。
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