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一言にヤクザと呼ばれるが、任侠は元々古代中国で生まれた大衆思想だったという。昔の日本でも、あぶれ者の世話を引き受け地域の安全を守る仕事を地元親分が担っていた。と、桜井さんは教えてくれた。
もちろん世の中には、善人と悪人が居る。人間社会は得てして悪が勝りやすいもの。だからこそ、善い者に加勢しなければ社会は乱れる。
しかし、時代は変化した。封建時代から続いた民間思想は変質し、敗戦後外国から持ち込まれた価値観に否定され、組織暴力団化、新興ヤクザの台頭に暴対法施行を経て、近年は素人の反グレが世間を騒がせている。桜井さんは、善意が根底にある任侠や義侠心の時代は終わった。と、寂しそうに云った。
無料案内所も最近、経済ヤクザ新経興業に組合が乗っ取られ。世間的には、さっきの二人は資本家と社員で、桜井さんの雇い主ということになる。
義侠心は失われてしまったけれど。人間の強かな欲望が消えることはけしてないのだ。
桜井さんの話は難しくてよくわからない。けれど、男が男に惚れるって、桜井さんと組長さんのことをいうのだろう。ちょっと妬けてしまうほど、桜井さんは熱く語っていた。
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