無料案内所

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「バーテンが、お客さんに手品見せたらウケると思うんだよね」 「そりゃあ、魅喜ちゃんの希望としてはそうだろうけど、今のところバーテンダーの募集はないし、あっても給与は男性より低いんだ。魅喜ちゃんは真面目でしっかりしてるし、ホステスの方が生活は安定すると思うけどな」  桜井さんはそういうけど、人間には向き不向きというものがある。 「接客ね……。知らない男の人と同伴したり、アフターするのは気が進まないな……。あっ! でもここ、とても条件いい。基本給三十万円+能力給、寮と社会保険完備なんて、毎日出勤するだけで十分暮らせる」  求人情報の派手な全面広告は破格な条件だった。自分のような素人でも客に営業かけずに務まりそうな好条件だ。けれど、桜井さんの顔は曇った。 「そこ、この前来たときも載ってただろ」 「そういえば、デジャヴュあるかも」 「そこは新経興業経営のキャバクラ店で、入店も多いが出店も多い。特に新人は三日と持たない。――まぁ、そういうことだ、お勧めはできないな」  夢はいつもキラキラと天上に輝いている。けれど、それを見上げる自分の足下は暗い沼底の闇がどこまでも続いている。
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