4章 龍彦の誘い

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私ががっかりしたような表情をすると、 「社長朝帰りみたいな感じ?笑」 本気でドキッとして「なんで分かるんですか?」と前のめりになって、龍彦に聞いてしまった。 「まあ…。社長もこれまでの人脈作りで夜の店とかよく取引先に付き合っていましたからね。だから、それを理由に女と飲んできたり、不倫してる人も数知れず…」 「だからって、智則さんがそんなこと…」 「いや、してましたよ」 不安になってふいに出た言葉をすぐに遮ってきた龍彦は、私の知らない智則さんをよく知ってそう…。 このタイミングで最初にオーダーした料理と日本酒が運ばれてきました。 日本酒をお互いおちょこに注いで乾杯して飲みました。 クイッと一瞬で龍彦は飲み終わると、すぐに2杯目を注いで飲んだ。 私は、自分の心を落ち着かせようと少しずつ、日本酒を口に運びました。 「社長が不倫していたの知ってますか?」 「奥さんの方だけ不倫したんじゃなくて?」 「いーえ?結婚して5年目かな…。僕もその頃会社広げるって社長から言われて、2年くらい仙台に出張の予定だったんですよ。でも、社長の不倫が原因で1年で本社に戻されました。火消しをしないといけなくなってしまって」 智則さんの過去の不倫の話。 そんなの本人から一言も聞いていなかった。 智則さんからは自身の不倫の話なんか一切聞いていなかったし、前の奥さんに縛られて大変そうな感じしかなかったから。 龍彦は智則さんとジャッカル立ち上げ当時から一緒に仕事をしているから、プライベートもよく知っていてもおかしくはないかも。 「前の奥さん…えっと、須美子さんだっけ?不倫がバレたのか丁度結婚して3年過ぎてから。結婚3年目まではすごく仲良かったんだけどね。社長が不倫してから、奥さんもすっかり冷めちゃったみたいで…」 空になった龍彦のおちょこに日本酒を注ぎながら、過去の智則さんの不倫話で不安が増してきてしまいました。 私も自分のおちょこに日本酒を入れました。 「智則さんの不倫って、1回だけなんですか?」
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