3章 窓際部署と2人の過去

2/2
前へ
/60ページ
次へ
「それで、窓際部署に1か月ぶちこまれたんですけど、問題全部解けちゃって…(笑)」 「え…?そうなんですか…?」 食事をしていた手が思わず止まってしまいました。 社内では恐れられている窓際部署に入れられても平気でいられる龍彦を、少し怖くも感じました。 「あんなの簡単じゃない。なんでみんな解けないんだろうって 笑 ついでにパソコンいじって、『水沼社長につまんねー問題しかねーぞ 笑 さっさと出せ笑』 ってメール送ったら、本人が部屋まできたよ」 龍彦と智則さんににそんな過去が…。龍彦もかなりのやり手だったのかもしれない。 「でもって、社長は『窓際部署から出すから勘弁してほしい。元の部署に戻すことはできないけど、会社に残ってほしい』と頭を下げてきたんだ」 「えー…あの智則さんが?」 智則さんも、龍彦が根を上げて会社を去るものだと思っていたのかもしれないです。 でも、その予想を裏切り、プログラムを解くばかりでなく、パソコンそのものをいじって智則さんにメールを送ってくるなんて思いもしなかったでしょうね。 今まで窓際部署に送った社員がしてくることはなかった事態に、智則さんも慌てたのかも…。 このままだと、また龍彦が暴れるかもしれないと思って、頭を下げて迎えにいったんでしょうね。 滅多に頭を下げることがない智則さんに頭を下げさせるこの人って…何者なんだろう…。 急に距離を縮め出した龍彦が、どんな人なのか考えながら話を聞いていると、この話にはちゃんとした落ちがありました。 「そうそう。暴言吐いて殴りかかった理由だって、後でちゃんと社長は調べてくれてさ…結局僕が悪くなかったことも分かったし。でも社員たちの対面上、会社の規則上、同じ部署には戻すことはできないから、今の部署にいるって感じ」 「そうだったんだ…。細見さん、色々大変でしたね」 龍彦は頭は良さそうだけど…手に負えないっていうか、小さな智則さんというか…苦笑。 ひとしきり龍彦が話し終えたら、今度は私に話を振ってきました。 「慣れればなんてことはない。それよりも、ちゃんと社長を労わってあげてくれよ」 「そうですね…。最近はもうあんまり会社にいってないみたいで、多分ですけどね。何してるか分からないですけど」 「それは。あまりよくないんじゃないか?パパ活アプリに再登録してた時点で怪しいでしょ」 智則さんのスマホを偶然見てしまったとはいえ、パパ活アプリが入っていたのは、寂しい気持ちにもなりました。 ずっと一緒に仲良く夫婦生活をしていたと思っていたのに、裏切られたようなところもあって。 智則さんを疑いたくないというと、龍彦は大きなため息をついて、しばらく沈黙が流れた。 それから龍彦は私の片手を握ってきたんです! 周りに誰もいないとはいえ、突然のことで焦っている隙に、龍彦は私に顔を近づけてきて…! 「僕なら、こんな可愛い奥さん放っておかないけどね(笑)…社長から奪ってやろうかな…笑」 これって…口説かれてる? まさか!…と思う自分がいるのに、一瞬にして顔が真っ赤になってしまって、恥ずかしさとドキドキが止まらなくなってしまいました。 龍彦と智則さん…、この2人、得体のしれない2人の男の渦に巻き込まれるなんて、この時は思いもしませんでした。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加