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図書室は恋の予感
「涙」とは、嬉しい時も悲しい時もあらわれる不思議な存在である。
秋雨舞はごきげんだった。
舞は大学1年生だが、同じ大学の2年生の本条隼人に片思いをしている。
2人の出会いは図書室だった。
舞は読書が好きなのでよく図書室に行く。
舞が図書室に行くといつも見かける男子がいた。
同級生では見たことがない人だったため舞は上級生かと思った。
ある日、舞は図書室で勉強をしていた。
図書室は静かで集中できるので勉強にはいい場所だった。
近くの席にはいつも見かける男子がいる。
舞が勉強の休憩をしているとその男子が話しかけてきた。
「もしかして今年入学した方ですか?」
声をかけられると思っていなかった舞は驚いた。
「はい・・!1年生です!」
「この教科書は1年生の授業のものなので懐かしいなぁって思って・・」
上級生かもしれないという舞の予感は当たった。
「先輩なんですね」
「俺は2年生の本条隼人です!」
「私は秋雨舞です」
これが舞と隼人の出会いだった。
隼人と話していくうちに舞は優しい隼人の人柄に惹かれていった。
舞は学校で隼人を見かけると積極的に声をかけた。
もっと隼人と話したいと思ったからだ。
地道な努力は結果を出し舞と隼人はいつも仲良く話すだけではなく、連絡先も交換してよくやり取りするようにもなった。
ある時、舞は隼人に試験勉強の相談をした。
「隼人さんは試験勉強はどんな風にしているんですか?」
「舞ちゃんは大学での試験は初めてだっけ?」
隼人は茶髪の爽やかなショートヘアの男子だった。
舞はセミロングの黒い髪をしている。
「はい、そうなんです・・!だから、なんか緊張してしまって・・。隼人さんに聞いてようかなと思って・・」
「なるほどね。たしかに不安にもなるよね」
授業の空き時間に2人は図書室で話していた。
悲しいことに図書室は人気がなく、今は舞と隼人の2人しかいない。
舞の同級生には「Wi-Fiがあれば行ってもいいけどなぁ〜」と言っている学生が多い。
それでは図書室がただの休憩場所になってしまうと、本が好きな舞は図書室の危機を感じていた。
「試験範囲を勉強していれば大丈夫だとは思うのですが、なんだか不安になってしまって・・」
隼人は少し間を置いてから舞に話しかける。
「舞ちゃんが嫌じゃなければだけどさ、一緒に勉強する・・?」
予想していない隼人の言葉に舞はおどろいた。
「俺も試験が近くてさ。そろそろ試験勉強しないとって思っていたから」
舞は隼人と近づけるチャンスだと思った。
「ぜひ、お願いします!隼人さんに教えてもらえたら私の単位取得は確定です!」
「俺はそんなにすごくないよ〜!」
隼人が少し照れながら言う。
「場所はどこにしようか?お互いの家とかでもいいとは思うけど舞ちゃんは女の子だからね。どこか希望はある?」
「そうですねぇ・・」
隼人と近づけるチャンスなのだからしっかり考えなくてはと舞は思った。
街の図書館やカフェでは他の人も大勢いるし、隼人と2人だけで話せる場所はどこなのか・・。
舞は1つの結論を出した。
「実はこの間、バイト先の人から紅茶をいただいたんです。それで、もし隼人さんがよかったら紅茶でも飲みながら私の家で勉強ってどうでしょうか・・?」
隼人は舞が「女の子」だからと気を遣ってくれたが、それをぬかせばお互いの家で勉強することに抵抗はない。
ならば家の方が2人だけでゆっくり話せるのではないかと舞は思った。
「紅茶好きなんだよね〜!舞ちゃんが良いのなら俺はオッケーだよ!」
「本当ですか?!よかったです!」
それから日時などの詳細も決まりあとは当日を迎えるだけだった。
舞は色んな準備をした。
紅茶の準備はもちろん、服装なども色々と考えた。
香水はどれにしようか、アクセサリーはどうしよう、と楽しい悩みはつきない。
美容に関してもいつも以上に髪や肌の手入れを入念に行った。
早く約束の日にならないかとワクワクしていた。
そして待ちに待った当日となったのだ。
こうした出来事があり舞はごきげんだったのだ。
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