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エイプリルフールな先生の手品
その1日はとあるカフェでのおしゃべりから始まった。
舞と隼人は休日に出かける約束をした。
最近、大学のみんなの間で話題になっているカフェがあった。
そのカフェに2人で行ってみようという事になったのだ。
いざ到着すると、人気のあるカフェだけあって店内はにぎやかだった。
「試験終わってしばらくはホッとできるよねー」
「ほんとですね。あとは結果を待つだけです」
今日のお出かけは試験が終わったご褒美ということもある。
一緒に試験勉強をしたあの日、舞は好きな人とキスをした。
ヴァンパイアとしてのキスは定期的にと隼人は言っていたが、次はいつなのだろうと舞は思った。
「ねーねー!先生はいつからヴァンパイアなのー?」
とんでもない言葉が隣の席から聞こえてきた。
舞と隼人は声の方向に思わず振り向いてしまった。
「200年前かなぁ」
「先生は毎日エイプリルフールだよねー!」
先生と呼ばれる男性と隼人の目が合うと互いにオッドアイになった。
「種も仕掛けもない手品はどうだい?」
「先生すごいー!どうやるの?教えて!」
中学生くらいの女の子が興味津々で男性に聞く。
「ちょっと待っていておくれ。手品の力が強すぎて隣の席の青年を巻き込んでしまったようだ。向こうで手品を解いてくるよ」
「お兄さん、ごめんなさい!もー、先生何やってるの!デートの邪魔しちゃダメだよー!お姉さんもごめんなさい・・!」
女の子が謝る。
「デート」という言葉に舞は驚いた。
人が見れば自分達は恋人に見えるのだろうか。
「気にしないでね、大丈夫だから!」
舞はそう言うと隼人と共にオッドアイになった男性と3人だけで話すために移動した。
安全のために女の子の様子が見える位置で話す。
「はじめまして。私はマオ。ヴァンパイアだが人間として暮らし今は教師をしている。仲間に出会うことはあまりないから嬉しいよ」
「俺は本条隼人です。まさか本当に自分以外にヴァンパイアがいるとは思いませんでした・・」
「私達ヴァンパイアは仲間に出会った時だけ互いの瞳がオッドアイになる。私も他の仲間に教わって知ったよ。基本的には人間として生きているからね。ヴァンパイアの事も完全にはわかっていない」
マオが舞の方を向く。
「こちらのお嬢さんはヴァンパイアではないね?」
「私は秋雨舞です・・!私は人間ですが隼人さんがヴァンパイアである事は知っています!」
マオは目を丸くした。
「ほう。これは驚いた。だけど良いことだと思うよ。ヴァンパイアの事を理解してくれる人間がいることはありがたいからね」
隼人はヴァンパイアとしての疑問をマオに聞いた。
マオもわかることは答えてくれた。
「マオさんは教師の仕事をしているって事は俺より歳上ってことですよね?」
「そうだ。私は20代だよ。それにしても血が苦手なヴァンパイアとはめずらしいこともあったものだ。ただのうわさ話だと思っていたよ」
ここで1つの疑問がうかぶ。
「あの女の子は生徒さんですか?」
舞が問う。
「生徒ではあるが私の学校の生徒ではない。家庭教師としての生徒さ」
マオが女の子の安全を確認する。
「彼女は不登校なんだ」
教師としての日々を送っていたマオは職場である中学校の帰り道に泣いている女の子に出会った。
夕方の公園のベンチで1人泣いていたのだ。
「どうしたんだい?私の学校の生徒ではないようだが・・?」
「母が・・、学校に行きたくないと言っているのに行きなさいと・・」
女の子が泣きながら言う。
「私はちゃんと勉強は家でやっているのに・・。母の事が辛くて黙って出てきてしまったんです・・」
話を聞くと彼女は中学1年生だった。
マオは少し考えた。
「わかった。私がお母さんと話をしよう。だから家には帰ろう。お母さんが心配する」
「わかりました・・」
マオは彼女の母親と話した。
教師である自分が無料で家庭教師をする。
だから、彼女を無理に学校に行かそうとするのをやめてほしいと。
母親は少し不満そうだったがなんとか許可はもらえた。
「なかなか厳しいお母さんでね。今日も図書館での資料集めと嘘をついてただの外出さ。たまには息抜きも必要だからね」
マオは優しい人だった。
「彼女は笑うようになった。あの日泣いていた彼女を知っているから、明るく話す姿を見ることは嬉しいよ」
女の子が見える位置にはいるものの舞は心配になってきた。
「私はあの子が心配だから戻りますね。隼人さんとマオさんはゆっくり話してください」
「舞ちゃん、ありがとね」
「すまないね」
舞が席に戻る。
「なんか手品が失敗しちゃったみたいだね」
「先生はいつも冗談ばっかり言っているので、たまには失敗もいいと思います!」
女の子がつづける。
「私は将来は先生みたいな教師になりたいんです!
私みたいに学校に行きたくない子が無理に学校に行かなくてもいいように家庭教師になりたいんです!」
「素敵な夢だね・・!」
将来の夢があることは良いことだ。
「デートの邪魔をしてしまってすみませんでした!」
「デート」という言葉に舞は少し恥ずかしくなる。
「まだ、お付き合いはしてないんだよね・・」
「えぇ!そうなんですか?!恋人だと思いましたよー!」
他人から見れば自分と隼人が恋人同士のデートに見えていることに舞は嬉しくなった。
「じゃあ、恋人になったら教えてください!お姉さんの連絡先って聞いても大丈夫ですか?」
舞に友達ができた。
「名前はなんて言うの?」
「うららです!」
「私は舞です!」
舞とうららが楽しく話しているうちに隼人とマオが戻ってきた。
どうやらオッドアイになるのは一時的なものらしい。
「イリュージョン成功だよ」
「嘘だー!失敗だよ!」
舞はうららの教師になる夢を心の中で応援した。
「実はね、俺もヴァンパイアなんだよ!まだ100年しか生きていないけど!」
「先生の影響でお兄さんまで先生みたいになっちゃいましたね・・」
「私はヴァンパイア見習いなんだよ!」
「えぇ!舞さんもですか!?」
お昼のカフェでのにぎやかな出来事だった。
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