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「お母さん、かばんは?」
航大が不思議そうに義母に尋ねた。
確かに服にポケットがなくても、大人は常に何らかの荷物を持っている。
「航ちゃん、ハンカチとかティッシュはランドセルよりポケットに入れてたほうが便利じゃない?」
「あ、うん。……そうだね。『手をふこう』と思ったときに、いちいちランドセル下ろして開けるよりポケットがいい」
日々ランドセルを背負って通学している息子は、義母の言葉に頷いている。
「そうなのよ〜。『今いる!』ってものはすぐ出せないと。まあママはバッグ大きいのもあるかな。若いお姉さんで、小さいバッグにハンカチと財布とスマホくらいしか入れてなかったらポケットと同じようなものかもね」
航大に返す彼女の声も表情も優しい。
「ママ、これからは一緒に出掛けるときはパパが何でも持っとくから。もし『ポケットないけど気に入った服』があったら気にせず買って着たらいいよ」
「ありがとう。機会があったらそうするわ〜」
その程度のことでも力になれれば、と言い添えた隆則に、涼音はやはり笑みを浮かべて答えた。
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