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4.プラットホーム
4.プラットホーム
2年が経ち、とうとう東京に戻ってきた。
冷たい風が心地よく、都会の喧騒が懐かしい。
自分は勝手だと思った。
東京に戻ると、彼女との思い出を振り返り、未来に思いを馳せた。
彼女との再会を夢見る自分がいた。
彼女の音信が確認できない中、僕は早退すると、不安と期待の入り混じった気持ちで彼女の最寄り駅に急行した。
彼女に会いたかった。
彼女がどんな生活を送っているのか、心の中で交錯する感情が駆り立てた。
もし彼女が幸せそうであれば、引き返す覚悟だった。
愛する人が幸せであるならば、その笑顔を見届けるだけで十分だった。
しかし、そのためには彼女の姿を確かめねばならないという自分勝手な思いがあった。
彼女の最寄り駅につくと、上りホームに移った。
当時は「ストーカー」の言葉はなかったが、女性を取り巻くトラブルはあった。
自分はストーカではないと行動で示したつもりだった。
下りの電車が到着するたび、ベンチから立ち上がり、改札へと向かう人混みの中で彼女の姿を探したが見当たらない。
帰宅しているかもしれないし、会社を辞めたのかもしれない。
時間が経つにつれ、焦りが増していった。
数時間前まで、私は彼女に逢いたくて、胸の高まりを抑えながら彼女が乗り込むであろう電車の到着を待ちわびていたが次第に期待は萎んでいった。
電車が到着し、人々が降りてくる中に彼女がいた。
その瞬間、心臓が高まった。
彼女はコートに包まれ、細身でありながら強さを感じさせる雰囲気を漂わせていた。
身長160センチほどの小柄で長めのコートが優雅さを引き立てていた。
しかし、彼女との待ち合わせが楽しみで仕方がなかったのも束の間、彼女と一緒にいる男性を見つけてしまった。
男性は30代前半で、私よりも遥かに背が高い180センチ位だった。
彼は彼女を守るように降り、改札口まで案内して見送った。
その一瞬、私の心は沈んでしまった。
私が期待していたのは、彼女との素敵な時間だけだった。
彼女の傍には別の男性がいることが分かり、心の中で苦しみが広がった。
彼女は優しい笑顔で男性に会釈し、改札を出て行った。
その笑顔は私に突き刺さり、深い痛みを残した。
以前は、デートの日には私が最寄り駅まで彼女を送り届けていた。
しかし、今はそんな権利を持っていない。
男性が彼女を見送ると、上りホームに移動してきた。
数時間前の高揚感とは裏腹に、僕は来たことを後悔し始めていた。
彼女を見つけた瞬間の興奮は、現実とのギャップによって後悔に変わった。
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