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二
最初に売ったポーチが好評だったのか、この販売スペースにぽつぽつと客が増えて来た。販売者が並べた商品を吟味しながら選んでいる。しかし私の目はごまかせない。
「販売者のお姉さん、これもう少し安くなりませんか? 出来ればセットで」
「お兄さん、あんたうちの商品、転売しようと考えてるね」
「俺が転売ヤーだって?」
「たくさん安く仕入れて高く売ろうって考えるのは転売ヤーの思考だよ。私にはわかるんだ」
どこのお店もそうだが、商品の転売ヤーという輩は必ずいる。
「ここはスーパーじゃないんだから防犯カメラもなけりゃ気付かれることもないよ」
「あんたたち、この店で万引きするつもりかい、そんなに欲しいなら値段安くするから買ってから出ていきなさい」
「ここの販売者、鋭いな」
「それからよそでパクったものは、全部返すんだよ」
万引きは許せないが、世の中にはフリマ商品が買えないほど金に苦労している人もいる。相対的貧困家庭で学校に通えずちゃんとした教育を受けられない人もいるんだと思うと、私人逮捕するよりちゃんと買うことを薦めた。嘗ての私もそうだったように?
「お前たち、大人しくしろ。そこの女、金を出せっ!」
フリマ強盗が包丁を片手に、私のもとにやって来た。
「無理です、出せません!」
「嘘をつくなあるはずだ!」
男は私の胸ぐらを掴み包丁の刃先を突きつける。
「ないんですよ、お金っ!」
「フリマの店で金がない?」
「商品は今から売るところですよ、なので商品が売れないとお店にお金入らないんです。したがって私をそうやって脅しても意味ないんですけど」
自分でいうのも恥ずかしい話しだが、一歩間違うと私もこんなマヌケな強盗になっていたのかもしれないと自戒する。
「じゃあお前のポケットマネーでいい」
「それただのカツアゲですよ」
「どっちでもいい、とにかくよこせ!」
「めちゃくちゃですよ、とにかく商売が出来ないので店から出ていってくれませんか?」
そういってフリマ強盗を突っぱねた。
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