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三
フリマ強盗を撃退した瞬間、フリマ会場で拍手喝采。店内が一気に忙しくなって来た。もともとの販売者はどこで何をやっているのか、未だに店に戻って来る気配がない。私一人でフリマ会場を切り盛りするのは流石に骨が折れる。
「ポケットですね、セットで五百円となります。ありがとうございます!」
「やったあ! 販売者さんのポケットお守りになります」
「いや、そんな大層なものじゃないですよ」
「ポケット下さい、セットで」
「はい、五百円になります。ありがとうね」
「この中にスマホとか財布とか入れたらスリにあわなさそう」
「気を付けて下さいね」
どういうわけかポケットだけが飛ぶように売れていき、店の売り上げが一万円を超えた。それにしても、一万円稼ぐのも大変な苦労だが、商売して稼ぐのも楽しくなって来た。フリマ強盗なんてこと考えずに地道に金を稼ぐ事をしていれば、私にも別の人生があったのかもしれない。あっという間にポケットだけが完売してしまった。
「ここのフリマ販売員、凄いよっ! ポケット完売してるしっ!」
「ありがとうございます、皆さんのお陰ですよ」
「あの私、ここで働きたいんですけど宜しいでしょうか?」
フリマ会場を訪れた外国人の男性に声をかけられる。
「働くなら、ここよりコンビニでバイトしたほうが時給良いですよ。夜勤もすれば給料も上がるし店長にもなれます」
「外国人アルバイトは中国とかフィリピンの人多いですがアメリカの人は受け入れてないみたいです」
「でもここ今日だけの開店なんですけど」
「私は日本のフリーマーケットの技能実習生になりたいです店長」
「私は店長じゃあないんですけど」
「でも店にはお姉さんしかいません、どうかお願いします」
「どうしても働きたいんですね、わかりました」
私は渋々、外国人の技能実習生を雇う事にした。
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