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七
訊けば、もともとの販売員だった女性は、店を開いたものの病気にかかり、病院に運ばれたが亡くなってしまったらしい。なのでお店には戻る事が出来なかった。本当に残念だ。そこへ私がお店の販売者になりすまして商売していたのを心配しながらじっと見ていたそうだ。
「あなたは店にやって来た転売ヤーや、万引きグループ、強盗までたった一人で追い払った」
「やりすぎでしたね」
「そればかりか、彼らを従業員にして、店の中を盛り上げてくれました」
「それは彼らのお陰ですよ。私は大した事なんてしていません」
「更にもともと犯罪者だった人たちを改心させつつも詐欺師からお店も守った」
「あれもみんなのお陰かな」
「それを踏まえても、あなたはとても売り方が上手でびっくりしました。こういう形でなければ一緒にフリーマーケットで販売出来ていたかも知れませんが残念です」
「それは私も同感です。一生懸命働いてお金を得るって辛いけど楽しいというのをあなたから学ばせて貰いました。あなたが本当の店長ですっ!」
「ここまでやってくれたんですから、わたしも何かお礼をさせて下さい」
「お礼なんて、今日一日の出来事で充分です。わたしは、あなたのお店も気持ちも盗んだんですから」
「商品は何も盜んでないですよ」
「盗もうとしただけでも罪です」
「それは違います、あたしができなかった事を引き継いでくれたんです。それに、あそこまでお店を盛り上げてくれたから罪は帳消しなりますよ」
「勿体ないお言葉です。店長っ!」
私は涙を流しながら、もともとの販売者に頭を下げた。
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